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奥穂高岳は手ごわかった。

しばしば感じることは、自分の限界を超えようとするときは、ちょこっとだけ前進するだけなのに、どうしてこうも莫大なエネルギーを消費するのだろうかということ。

厳冬期の奥穂高岳は自分自身の中でも、未知の分野。
標高3000メートル、マイナス25度、風速20メートルと言えば、3つの情報だけになってしまうけど、その実態はと言えば、人間の力ではどうすることもできない想像を絶するといったところか…。

もちろん天気はめまぐるしく変わるし、雪面もパウダーだったり、カチカチにクラストして氷のようになっていたり、はたまた硬いのは表面だけで、その上に乗るとズボッとはまり込んだり…。

冬のオトナな世界に比べたら、夏山はお子ちゃまの世界といったところか。
だから目と鼻の先に見えてるからと言って、簡単に登れるかと言えば大違い。第一関門である蒲田富士は下から見ると、すぐ登れそうに見えるのだけどね。
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必至こいて登って、ようやく南陵との出合いにたどり着いた。
ラッセルと言って、雪をかき分けるので、ちっとも前に進んでいかない。
距離にしておよそ1700メートル。標高差1150メートルを登りきるのに、7時間。
きっとおばあちゃんがホフク前進しているほうが、まだ早いはずだ。
奥穂高岳は手ごわかった。_d0091069_19581360.jpg


そこから、200メートルに満たない距離の、およそ標高差50メートルを登りきるのに1時間30分
もちろん手抜きをしているわけでもないし、全開アタックなのだけど、赤ちゃんのハイハイだって、1時間30分もかければもっと進むだろう。
蒲田富士の山頂付近から来た道を振り返る。
奥穂高岳は手ごわかった。_d0091069_207557.jpg


やがて、F沢のコルの100メートルほど手前にたどり着くころには、夕方4時。
つまるとこ、直線距離にして、2キロちょい。標高差1200メートルほどを移動するだけなのに、9時間もかかったわけだ。
全開で登ったので、当然その代償も大きくて、疲労のあまり食べ物が喉を通らず、ホットレモンが晩御飯の代わりになった。あとは白湯だけ。
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ただ、夕暮れ時は素晴らしかった。
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雪山は基本3色。空の青と、雪の白。あと岩の黒しかないのだけど、この時間の色の変化はダイナミックだ。
そしてピンク色に染まる涸沢岳。
疲弊しすぎてフラフラなうえに、夜にせかされるように雪洞を掘っていたのだけど、こればかりは素晴らしい。
「どうして世界はこうも美しいんだろう。」
思わずつぶやいてしまう。
雪洞の中の様子も写したかったけど、疲れすぎてそんな余裕もなかった。
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夜、寒くて2~3回ほど目が覚めた。
用を足しに外に出ると、真ん丸な月。空は澄み渡り。彼方の街の明かりがキラキラ。
月明かりに照らされた山の斜面はキラキラ光り、ライト無しでも新聞が読めるほど明るい。
思わず散策したくなるけど、雪洞の前の畳1枚分ぐらいのスペースから出るわけにはいかない。
不用意に出てしまうと、目の前のカチカチの斜面で滑り、数百メートル下の岩場で無残な肉の塊になってしまうので。

朝、目が覚めて玄関のドアを開けたら、こんな風景が広がっていた。
雪洞の前の風景は圧巻。
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F沢のコルから涸沢岳の登りに取りつく。
しかし、気温が上がりあったかくなってしまい、氷が緩んで目の前のハイマツの上に積もった雪壁というか、氷壁からピキピキミチミチと不気味な音がする。
奥穂高岳は手ごわかった。_d0091069_20581340.jpg



足元には滑らかな死の滑り台。強引に行くにはだいぶ無理があるし、暖かさで、雪崩が起きても不思議はない。泣く泣く撤退。
谷底を覗き込むとぞっとする。
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by ygenki | 2012-12-30 20:53 | 登山、アウトドア


自転車をこよなく愛する日記です。 日常の光景をストレートに書いています。


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